「タスペーサーを使わないと雨漏りする」のウソ・ホント!?


タスペーサー

外壁塗装の見積りを取ったり、ホームページで調べたりすると「タスペーサー」という見慣れない用語を目にする事があります。


タスペーサー」とは、屋根を塗装する時に使う便利グッズのような商品です。

皆さんがホームページ等で見かける場合には、「タスペーサーを使わないと雨漏りする」と書いてある事が多いので、かなりドキッとして気になるはずです。

そこで今回は、タスペーサーについての誤解や誘導の広告に惑わされないように、適切なタスペーサーの使用条件と、不適切にタスペーサー勧める業者の見分け方について解説したいと思います。



タスペーサーを使わないと雨漏りする??


確かに「屋根を塗った事が原因で雨漏りしてしまう場合もあります。
ですから、それを回避するためにタスペーサーを使います。


ただ、まるで「タスペーサーを使わないと、必ず雨漏りしてしまう」というような記事ホームページやチラシにありますが、それは間違いです


なぜなら、私自身が既に1,000件以上の屋根を【タスペーサーを使わなくても雨漏させないで塗装してきた実績】があるからです。
つまり、実際には
タスペーサーが必要な場合と、必ずしも必要でない場合があるのです。

では、どのような場合はタスペーサーが必要なのか?という点と、どうして「タスペーサーをしないと雨漏りする」といった間違いが広まってしまったのかを解説していきましょう。



タスペーサーとは?


タスペーサーって何をするための物なの?

タスペーサーとは、スレート屋根を塗る時に使うものです。

屋根は雨漏りから建物を守るために重要なパーツなので、雨が入らないように隙間が無い方が良さそうに思えます。しかし実際は瓦屋根のように隙間が開いていて、スレートの屋根も1枚1枚載せてあるだけで、その隙間は塞いだりしていません。

その隙間は実は必要で、

にスレート屋根にはを塗装すると、塗料がスレート屋根の重ね目の隙間を埋めてしまう可能性がある時に、強制的に隙間を開けておくために使うクサビ状の詰め物です。


タスペーサーとはどんなモノ?

大きさ:幅43㎜×長さ36mm

材質:ポリカーボネイト

メーカー:株式会社セイム


屋根を塗装して雨漏りしてしまう場合の原因

では、屋根を塗装して雨漏りしてしまうのは、どのような場合なのでしょう?

  1. スレート屋根に塗装する
  2. 屋根の隙間が塗料で詰まって埋まる
  3. 毛細管現象で屋根の裏側に水が入る
  4. 出口が無くなる
  5. 雨漏りする

スレート屋根の場合は日本瓦のようにS字型ではなく、平らな板状です。
そこに塗料を塗りこんで固めてしまうと、屋根の下部の隙間を埋めてしまう場合があります。

ですから、屋根の隙間が塗料で埋まらないように屋根の隙間を確保して、雨漏りを回避しなければなりません。

しかし、その対処方法がタスペーサーだけしかないというのは間違いです

なぜなら、屋根を塗る場合に重ね目の隙間を確保しながら塗装する方法は3つあるからです。



タスペーサーを使わないで屋根を塗る方法


確かに必要が無くても全ての屋根にタスペーサーを入れておけば、業者もお客様も安心です。

しかし屋根の隙間を確保しつつ塗装する方法は、タスペーサーを使う以外にも2パターンあります。


縁切りをする

縁切りとは、屋根の塗装が終わった後で隙間が埋まってしまった部分を、カッターやヘラ・皮スキなどを使って、屋根と屋根の隙間を開ける工法です。


「縁切り工法」はコストパフォーマンス的にも、塗ったところに後で「切り口」を作ってしまう点でも、あまりメリットのある工法とは言えません。

タスペーサーを使えば、縁切りをしなくても強制的に隙間を開けることが出来るので、縁切りより手軽に同じ効果を得ることが出来ます。
ですから「縁切り工法」を行うならば「タスペーサー工法」の方がお勧めです。


普通に塗る

実は、「一般的な屋根の場合」には、普通の材料で普通に塗れば、タスペーサーや縁切りは不要です。

上記の条件なら屋根の隙間は埋まってしまわない事がほとんどです。

ですから、花まるリフォームでは基本的に「縁切り」も「タスペーサー」も使いません。



タスペーサーも縁切りも不要な「普通の屋根」とは?


タスペーサーや縁切りが不要な「普通の屋根」かどうかは、屋根の条件・材料の条件、そして職人の技術により判断する事になります。

ですから、状況によりタスペーサーが必要か、不要かを判断する事も出来ます。


では、どのような場合にはタスペーサーに頼らず「普通」に塗れて、どのような場合にはタスペーサーに頼らざるを得ないのでしょうか。
順番に説明いたしましょう。

タスペーサーが不要な場合

まず、タスペーサーが不要な場合の3つの条件に付いてまとめてみました。

① 初めての屋根塗装で築10年以上経過している場合


「普通」というのは少し語弊がありますが、「初めて外壁塗装をする=初めて屋根塗装をする」方が多いのが現状です。

この場合は、塗る前の屋根の隙間から判断して、塗った後の屋根の隙間がどの程度確保出来るかを見定めることがポイントです。

新築の屋根は、下地に添ってピタッ!と敷かれているので屋根と屋根の隙間がありません。

しかし築10年も経ってくると、直射日光を受け風雨にさらされた屋根材は新築時の状態を保てずに反ってきます。
すると、「普通」は、適度に屋根材と屋根材の隙間が空いているのです。

多ければ5mm程の隙間がある箇所もあり、塗料でその隙間を埋めようと思っても埋める事は出来ません。

そんな屋根の塗装を行う場合には、普通はタスペーサーで隙間を強制的に開いておく必要がありません。

※2回目以降の塗り替えの場合には、初回の塗料で埋まっている状況を判断してタスペーサーが必要か不要かを判断しなければなりません。



②油性塗料を塗る場合 


メーカーさんから聞いた話ですが、屋根塗料の出荷割合で言うと、8割は油性の屋根塗料だそうです。
ですから「普通」は屋根塗装をする場合は油性の方が多いです。

この場合は、塗った後の塗料・塗膜の厚みがポイントとなります。

屋根用の塗料にも種類がいくつかあり、塗料の厚みに関しては大きく以下の3種類に分けられます。

A:一般的に塗っている【油性塗料】(出荷量が多い)

油性の塗料は1つ1つの粒子が細かいのも特徴の1つです。
粒と粒は独立して並んでいるだけなので、隙間の間を橋渡しするように埋めてしまうことがありません。

さらに、屋根材に対してある程度浸透して固まる傾向がありますので、油性塗料は隙間に溜まって固まりにくい性質があります

B:一般的には塗られない【水性塗料】(出荷量が少ない)

水性塗料は油性塗料と比較すると粒子が大きいのが特徴の1つです。

粒と粒同士がくっついてシート状になる性質があるので、屋根と屋根の隙間を橋渡しするように埋めてしまいがちです。

さらに、屋根材には浸透しないので、水性塗料は屋根の隙間段差に溜まってしまう傾向にあります

C:特別な効果を求めて塗る【特殊塗料】(出荷量はごく少ない)

屋根用に塗りたい塗料の中には特別な機能があるものもあります。代表的な塗料としては、断熱系のビーズ入りの塗料などです。これらの塗料には厚みを持たせる必要があり、その厚みにより屋根材の隙間は埋まってしまいます。
(屋根の隙間が埋まらない薄い塗り方だとそっちの方が問題ですね)

このように一般塗料メーカーの屋根材の出荷量から考えると、屋根に塗る塗料は【A】の油性塗料で塗られている場合がほとんどです。そうなると、そもそもタスペーサーの出番がありません。

③ 普通の塗り方で塗る場合


この場合は、塗る職人の技術や経験、手抜き業者かどうか?がポイントとなります。

これまでの「一般的な屋根の条件=初めての屋根塗装で油性塗料で塗る場合」、普通に考えれば屋根の隙間は埋められないことになります。

しかし、それでもタスペーサーが必要だというのなら、よほどひどい塗り方でないと隙間が埋まりません・・・。

さて、便宜上タスペーサーが必要な場合の「3つの条件」とは言ったものの、「初めての屋根塗装で油性塗料を使い、普通に塗れば・・・」と言うのは大半の方が当てはまる条件となります。

つまり、タスペーサーが必要な条件の方が「例外的」な場合なのです。

そこで、例外的な場合に便利グッズとして利用するタスペーサーが活躍する【例外的な条件】に付いて検証してみましょう。

タスペーサーが必要な場合の条件とは?



そして、当然ですがタスペーサーや縁切りが必ず必要な状況の屋根もあります。
では、「タスペーサーが必要な時の条件」に付いて考えてみましょう。

① 塗る前の屋根の隙間がどのくらい空いているか?

2回目以降の屋根塗装の場合で、前回塗った塗料により屋根の隙間が埋まりつつある場合。

そんな屋根に再度塗装をする場合には、少し空いていた隙間を埋めてしまう場合が考えられます。

ただし、2回目以降の屋根塗装であっても、現状で隙間が多く空いている場合にはその隙間が無くなるほどの事は考えられないのでタスペーサーが必要無い場合もあります。

②水性塗料を塗る場合

油性塗料の欄に書いたとおり、水性塗料の場合には屋根の隙間を埋めてしまいやすくなります。

なぜ水性塗料を塗りたい業者がいるのかは不明ですが、既に前回の塗装で水性塗料が塗ってある屋根の上には水性塗料しか塗れない場合が多いです。

つまり、初めての屋根塗装では無い場合で前回の材料が水性塗料の場合、と言うのが確実にタスペーサーが必要な条件になります。

③ 普通の塗り方で塗らない場合??

これは問題外なのですが、次の項目で詳しく説明することにします。

  1. 7. タスペーサーへの考え方で分かる本当の問題点

上記のように、タスペーサーが必要かどうか?という点については、現場状況によるケースバイケースと言うことになります。

しかし、ネット上に散在する情報によると・・・

・タスペーサーを入れて塗らない業者は手抜き業者である

・タスペーサーを入れて塗らないと雨漏りの原因になる

・・・ということになってしまいます。

確かに、屋根を塗る時にタスペーサーを入れたら悪影響が出る事は無いと思いますが、本来は全ての屋根にタスペーサーを入れる必要はありません。

ではどうして全ての屋根にタスペーサーを入れる必要があると考えてしまう業者がいるのでしょうか?その理由のバリエーションは5つに分類できます。

  1. 8. タスペーサーを使いたい業者の心理

① 過去に屋根を塗って雨漏りした経験がある業者(職人)

これは過去に痛い経験をしてしまった建築業が陥りやすい「思い込み」のパターンです。

雨漏りなどを一度経験すると、次回からの似たような案件全てに同様の状況を当てはめてしまいがちです。原因の特定や対応方法を検討・研究していけば回避できる事もあるのですが、屋根の塗装に関しては全てタスペーサーを入れる事で対応しようとすれば、そのような思考に陥ってしまいます。

② メーカーの広告に書いてあるから・・・

このケースは結構多くて困りものです。思考停止も甚だしいのですが一番多いパターンではないでしょうか...。

タスペーサーの製造メーカーの悪口や営業妨害をするつもりはありませんが、当然どんなメーカーも商品も、その有益性を高めて売れるようにしたいものです。その為の広告や資料を作る訳ですが、そこは許される範囲内でオーバーな表現が組み込まれているものです。

TVCMしかり、新聞広告からホームページまで...広告とはそういうものです。

建築業界で言うと、何十年も前から新建材には「半永久的」と言うコピーが現在も使われ続けています。

それに我々業者がコロッと騙されてどうするんでしょうか??そこをきちっと判断するのが業者の役割なのではないでしょうか??

③ タスペーサーの要・不要を判断出来る人(見積もりを作る人・管理監督する人・塗装職人)がいないから

この場合は上記のケースに似ていますが少々違う点は、必ずしも全ての屋根にタスペーサーを入れる必要が無いのは分かっているけれど、それを判断出来る人材に不安がある場合です。

会社が大きくなると仕方がないことなのかもしれませんが、結局は適切な判断が出来ない人材が工事のプラン設計から品質管理・作業までを担当していることになります。

④ どんな下請け職人が来るか分からず、どんな塗り方をするか分からないから 

実はこのケースが上記のケースと合わせて複合的に多いのかもしれません。

建築業界の職人手配の仕組みでは、まだまだ下請け・孫請け・助っ人職人を上手く使いこなさなければならない事情があります。

つまり、次の現場で作業する職人があらかじめ分かっている事の方が珍しく、仕事を受注した元請け業者の方も、そういった事情を含めて工事の管理をしていかなければならない訳です。

すると、どんな職人が来ても大丈夫なように工事の方法や材料の選定もしておかなければなりません。まして屋根に関する工事は雨漏りに直結する事ですから慎重にならざるを得ません。

そこでタスペーサーと言う保険的商品があって、使わないと雨漏りする・使えば雨漏りしない、というようなメーカー広告を見てしまうと、その保険を掛けておかなければ安心して作業をさせられません...

タスペーサーさえ入れておけばどんな職人がどのように塗っても安心だ。という訳なのでタスペーサーを入れる必要があるのはこの場合業者の保険のため、となります。

⑤ 水性塗料・特殊塗料を塗りたいから

最後に、塗料の選定上タスペーサーが必要になる場合もあります。この場合は適切な判断のもとに必要不可欠なものですから問題はありません。

特に特殊塗料系の屋根材は厚みを付けないと意味が無いことになっていますので、タスペーサーは必須でしょう。(ただし、タスペーサーで隙間が確保出来るようでは、塗料の厚みに問題がありそうな気がするのですが...大丈夫なのでしょうか?)

  1. 9. まとめ(タスペーサーを使う裏の理由)

さて、タスペーサーにまつわる諸事情について、ここでまとめたいと思います。

① スレート屋根の塗装を行う時にタスペーサーを入れることで、悪影響などのデメリットは特に無い

② タスペーサーを入れる必要性は状況により判断することが出来る

③ 「全ての屋根にタスペーサーを入れなければ雨漏りする」と言う人は不勉強か嘘つきか自社の人材に不安がある証拠

④ タスペーサーが必要な場合はその判断理由に、屋根材の隙間が埋まってしまう理由を明確に説明出来なければならず、必ず屋根に乗って見ないとその判断は出来ない。

⑤ 出来れば屋根の隙間のクローズアップ写真を撮ってもらい、隙間の埋まり具合を見せてもらう事も必要になる。

以上、だいぶマニアックな記事になってしまった気もしますが、お客様からこれまで何度もタスペーサーについて質問を頂いた時にお話させて頂いた内容をまとめてみました。

タスペーサーは使いようによってはとても良い商品だと思うのですが、少々広告の脅しが効きすぎているようです。

また、品質に自信の無い業者の都合で使われることも多く、そんな時に適切に不要だと判断しているこちらがタスペーサーを使わないことで疑われる場合もあり、ちょっと辛口になってしまっているかもしれません。

この記事が参考になって、皆さんの外壁塗装の業者選びの際に役立てて頂ければ幸いです。


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