屋根の角度と屋根塗装のマメ知識
建物を雨や雪、太陽から守る「屋根」は、外壁塗装を行う時に一緒に塗装を行うのが一般的ですが、屋根を塗装する際には「屋根の傾斜」についても知っておかなければなりません。
屋根を塗装をする時には傾斜の緩い屋根の場合もあれば急傾斜の屋根もあり、それぞれに注意しなければならないポイントがあります。
今回はそんな屋根勾配のマメ知識や塗装工事を行う際に必要な知識について解説していきます。
1. 屋根は「角度」より「勾配」で呼ぶ
さて「屋根の角度」についてのコラムなので、ここで屋根の角度を表す言葉について簡単に触れて行きます。
屋根の角度を表す建築用語で適切な言葉には「屋根勾配」という言葉があります。
1-1. 屋根の傾斜は「角度」で決めない!?
実は家の設計では屋根の傾斜を分度器の「角度」で決めている訳ではありません。
出来た屋根は結果的に角度で表す事は出来ますが、大工さんが家を建てる時に「この屋根は30度だね」といった風に角度に合わせては作らないのです。
大工さんはどのように屋根を作るかと言うと、「屋根勾配」を考えて作ります。
1-2. 屋根勾配とは?
屋根勾配の単位は【寸】です。
建築の世界では寸や尺が今でも普通に使われていて、1寸は3.03センチメートルで、10寸が1尺(30.3センチメートル)になります。
屋根勾配の表し方は、水平方向(横)に1尺(10寸)行ったところで、何寸垂直方向(縦)に上がったか?によって考えます。
例えば1尺横に行き、5寸上がった場合は「5寸勾配」と表します。
一般的な屋根の場合は4.5寸~6寸程度の勾配です。
1寸の1/10は1分(いちぶ)なので、4.5寸は4寸5分勾配と言います。
2. 屋根材により必要な勾配がある
屋根に傾斜がある理由は、雨漏りしない為です。
屋根に落ちた雨水は屋根材に当たり直接浸みこんでは来ません。
屋根材の傾斜が緩ければ雨水は継ぎ目から逆流して天井裏に入り込んでしまいますが、傾斜が急なら雨水は逆流せずに軒先まで流れて行く、ということです。
ここまではごく当たり前の話ですが、問題なのはその屋根の傾斜の角度です。
それぞれの屋根材の傾斜角度には「最低勾配」というものがあります。
最低勾配というのは、それ以上緩いと雨漏りの危険がある傾斜の事です。
一般住宅の屋根で使われている屋根材とその最低勾配・一般的な家での勾配を表にまとめました。
屋根材の種類 | 最低勾配 | 一般的な勾配 |
金属 | 1寸以上 | デザインにより垂直までと自由度が高い |
薄型スレート | 3寸以上 | 主に5.5~6寸だが12寸等の急傾斜も可能 |
瓦 | 4寸以上 | 主に4~5.5寸が多い(急傾斜は不可) |
3. 屋根塗装をする時に関係してくるマメ知識
3-1. 勾配がきつくなると屋根面積が増える
屋根の傾斜がきつくなるとその分屋根面積が増えていきます。屋根面積の増え方を下記の表にまとめてみると、急傾斜になると増加率が上がっていくのが分かります。
勾配 | 角度(度) | 1辺の屋根の長さ |
水平 | 0 | 1.000 |
1寸勾配 | 5.9006 | 1.005 |
2寸勾配 | 11.3099 | 1.020 |
3寸勾配 | 16.6992 | 1.044 |
4寸勾配 | 21.8014 | 1.077 |
5寸勾配(※) | 26.5650 | 1.118 |
6寸勾配(※) | 30.9638 | 1.166 |
6寸5分勾配 | 33.0239 | 1.193 |
7寸勾配 | 34.9920 | 1.221 |
10寸勾配 | 45度 | 1.414(ルート2) |
12寸勾配 | 51.3401 | 1.562 |
3-2. 勾配が急な場合は屋根足場が必要
「一般的な屋根」の場合には、「一般的な建築職人(塗装職人)」なら普通に歩いて登り、作業が出来ます。
6寸勾配までの屋根なら特に問題無く屋根の塗装が可能です。
3-3. 急勾配は6寸5分勾配以上
両手に何も持たず、ただ屋根の上を歩いて登るだけなら7寸勾配でも行けるかもしれません。
しかし、何らかの道具を持って作業を行う場合には、安全管理上の面でも6寸5分勾配からは屋根に足場が必要になります。
5. まとめ
屋根の角度は、建物のデザインや室内空間(屋根裏の空間)に関わる重要な部分です。
屋根の勾配を取ると素敵な外観になりますし、ロフトや吹き抜けのあるお家に出来ます。
ただし、屋根を塗装する際には屋根足場が必要だったり、屋根の面積が増える事があるので、メンテナンス費用が掛かってしまうのには仕方がない部分かもしれません。

