外壁塗装の塗料の種類~カテゴリー・グレード・付加機能について~
- 投稿日:2016年 1月 1日
- テーマ:塗料の種類・色選び
塗料のグレードの違いは耐候年数、いわゆる「持ち=寿命」の違いです。
グレードが上がれば工事の価格の差にも反映されますので、どの塗料選ぶかで工事の価格に差が出る部分です。
しかし塗料の種類や分類、その違いというのは一般の方にはなじみが薄く、 良く分からないものです。
残念ながら、そのように一般の方が分からないことを利用して不適正な価格設定をする業者がいたり、間違ったままの情報をホームページに載せてしまっている場合などもあります。
ですから、たまたま出会った業者やホームページの情報が不適切であっても、そのことに気が付いていない方も多いのです。
そこで今回は、皆さんが外壁塗装をする時に必要な外壁塗装の塗料の種類についての情報を整理してお伝えしたいと思います。
1.外壁塗装の分類の注意点
一般的な塗料の分類の間違い
外壁塗装の見積もりで価格の上下を左右するのは、塗料のグレードというのが一般的です。塗料のグレードにより寿命や耐久年数が変わります。
価格の高い塗料のカタログには「寿命が延びるのでトータルではお得になります」といった売り文句が書いてあります。
そんな一般的な塗料のグレード分けの解説として、下記のような図を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
一般的なグレードの順番として順番に、
【アクリル → ウレタン → シリコン → フッ素】
のようにグレードが上がっていきます。
これはあくまで簡略化した参考モデル図なので、本気で外壁塗装を検討中の方にとってはあまり参考になりません。
この分類は塗料の【樹脂の種類】によるグレード分けですが、実際の塗料の分類はこのグレードの差だけでは決められないからです。
簡略化は必要なのですが、塗料選びをこの分類だけで済まそうとすると、後悔してしまう事があり、注意が必要なのです。
塗料のグレード分けの注意点
塗料はこの図で考えてしまうと、いきなり【樹脂の種類による分類】を考えることになりますが、
実はこの前に考えるべき、【塗料のカテゴリーによる分類】を飛ばしているのです。
実際の塗料には水性塗料・油性塗料などでも違いがあり、
上記の単純な樹脂のグレードでは耐候年数の目安にならくなってしまいました。
では、皆さんが外壁塗装をする時に選ぶ塗料では、どのような塗料のカテゴリーやグレードの分類に注意したら良いのでしょうか。
実際に複雑にならない程度にカテゴリーを分けて見ると、下記の図のようになります。
では、複雑にならない程度に、順に解説していきましょう。
2.塗料のカテゴリーによる分類
実は、外壁塗装の分類には、【アクリル → ウレタン → シリコン → フッ素】のような樹脂のグレード分けの前に塗料のカテゴリーの分類があります。
この部分をきちんと分けて考えるだけで、塗料の種類の分類がスッキリします。
では、現在戸建て住宅の外壁塗装に使われている主な塗料のカテゴリー分けをいくつかご紹介しましょう。
2-1 水性塗料 と 油性塗料
最初のカテゴリー分けは、塗料の【性質】です。皆さんも塗料に油性と水性があるのはご存知かと思います。
この【水性】と【油性】の違いというのは、塗料を溶かしている液の種類の事で、分かりやすく言うと【薄め液】の種類です。
薄め液というのは専門的には【溶剤】と言います。
水性塗料には水を入れて薄めます。
油性塗料の薄め液は「塗料用シンナー」です。
英語で「thin シン」 は「薄める」という意味ですが、水性塗料の「水」の事は薄め液であっても「シンナー」とは呼びません。
そして水性塗料と油性塗料、それぞれに上記の【アクリル → ウレタン → シリコン → フッ素】のグレードがあります。
※実際には油性塗料はさらに細分化されています。 ・【強いシンナー(とっても臭い)のことを【強溶剤】と言います。 ・【弱いシンナー(若干臭い)のことは 【弱溶剤】と言います。 ※強溶剤はさらに細分化され、ラッカー系・アクリル系・ウレタン系など、それぞれのシンナーを使うように種類が分かれています。(今は戸建て住宅の外壁塗装で強溶剤はほぼ使う事は無いと思います) |
2-2 艶有り塗料 と 艶消し塗料
2016年現在、一番注意したいのがこの【塗料の艶】の有る・無しです。
外壁の「艶」は見落としがちですが、とても重要な要素です。
ちなみに、上記の【アクリル → ウレタン → シリコン → フッ素】のグレードの話は、おおむね艶有り塗料の中での話になります。
艶消し外壁用の専用塗料は、今のところシリコン系しかありません。
ですから、現在の外壁が【艶消し塗料】の場合、艶をどうするか?の話題が無く、いきなり塗料のグレードをどうするか?の話題になってしまう事があります。
その場合、艶の選択肢が無いままに【艶有り塗料】を塗られてしまうことがあるので気を付けましょう。
新築時に艶消し素材で外壁が出来上がっているお家の外観は、下記の画像を参考にしてみてください。
※実際には艶有り塗料でも艶の調節が出来ます。 ただしその場合には、【艶消し添加剤】を入れて、艶を落とす調整をしなければなりません。 艶消し添加剤は本来は不要なものです。 しかし塗料の中の10%以上を占める場合もあります。 つまりこの場合の艶消し塗料は、本来は不要ないわば不純物を混入することで艶消しにしているので、「元々の塗料の性能を100%発揮出来るか分からない」と言われています。 ですから、このコラムでは艶消し仕上げに塗る時には艶消し専用塗料を塗ることとし、【艶有り塗料を艶消しにしたもの】は検討の範囲から外しています。 また、主に水性塗料には全艶消しが選べますが、油性塗料では3分艶までしか艶を落とせません。 |
2-3 1液型塗料 と 2液型塗料
1液型塗料とは、缶が1つで封を開けてそのまま塗れるタイプの一般的な塗料です。
2液型塗料とは、缶が【主剤】と【硬化剤】の2つに分かれていて、塗る時にその2つを混ぜて塗るタイプの塗料です。
液状のもで使う時に混ぜるものというと、接着材や髪のカラーリング剤がありますが、それに似た感じです。
どれも1液型のものもある中で、わざわざ2つの液に分け混ぜ合わせるのには理由があります。
それは主に性能に関わる部分と、手軽さの部分です。
メリット・デメリットは下記の表のようになります。
1液型塗料 | 2液型塗料 | |
塗るまでの手間 | ◎(簡単) | ×(計量が面倒) |
仕上がり | 〇(普通) | (きれい) |
耐久性 | 〇(普通) | ◎(高い) |
価格 | (塗料による) | |
真面目な職人は・・・ | 〇(普通) | ◎(好き) |
面倒くさがりの職人は・・・ | ◎(簡単なので好き) | ×(面倒なので嫌い) |
監督しやすさ | ◎(特に無し) | ×(職人が正しく使うか分からない) |
結論 | 職人による手抜きや失敗の危険が心配な場合は、1液型の方が安心 | 職人が適切に正しく使えるなら、2液型の方が高性能で長持ちになる |
上記の表のように、1液型は扱いやすい半面、性能は標準的です。
2液型は計量の手間が面倒な半面、性能は高くなります。
つまり、真面目で正確な職人が扱うなら、2液型塗料の方がメリットを得る事が出来ます。
しかし、どんな職人が塗るか分からない場合や、職人の真面目さ・正確さが心配な場合には1液型塗料の方が安全なのです。
3.付加機能を加えた塗料
塗料も化学製品なので、新製品が出る度に色々な追加の新機能が加わります。
それらは上記のそれぞれに追加される付加機能です。
どのようなものがあるのでしょうか。
セラミック(停滞電性)
セラミックは「焼いて固めたもの」という意味で、陶器や磁器等が代表的です。
建築の材料の中で一般的に知られているのはタイルでしょう。
本来塗料の成分的には無関係なセラミックなのですが、セラミックを利用した塗料には2種類あります。
その1つが、主原料はその他の塗料と変わらず、その中にセラミック成分を少し混ぜたものです。
その効果・効能は、外壁を汚れにくくする以下の2つの機能です。
- 静電気を発生しにくくすることで空気中に漂っているチリやホコリを吸い寄せないようになります。
- セラミック成分が外壁表面に浮き出て固まり、雨で汚れを洗い流す効果を発揮する。
このような効果を期待したいのは主に次のようなシチュエーションでしょう。
- 雨スジ汚れが多く目立ってしまうのを改善したい場合
- 交通量が比較的多く汚れが付きやすい地域
- 屋根が無いビル系の建物や屋根があっても軒先の無い戸建て住宅
注意したいのは軒先が大きく出ている建物だと、雨が掛らず洗い流す効果が期待できないことです。
セラミック入りの塗料にも【ウレタン → シリコン → フッ素】の樹脂のグレードがあります。
それぞれのベース塗料のオプション的追加機能として塗料の性能を評価する必要があります。
もう1つのセラミックを使った外壁材は、主原料のセラミックを細かく砕いて吹き付け、その表面をクリヤー塗装で保護するものです。 こちらは基本的に「塗料」とは言わず「石材調仕上げ塗材」と呼び、別枠の材料として考えます。 |
また、もう一つ注意したいのは、セラミックのイメージを利用して【耐熱性・耐候性・耐久性などに効果がある】と言っている営業マンやホームページ等の記載です。 確かにそれらの効果が【全くゼロ】ということはないとは思いますが、その効果はオマケ程度止まりだと思えます。 |
遮熱塗料
遮熱塗料とは、太陽光の近赤外線成分の反射率を上げて、表面温度が暑くならないようにする塗料です。
詳しくは【遮熱塗料のウソ・ホント!?】をご欄頂きたいのですが、簡単に特徴を説明しましょう。
- 遮熱塗料は、太陽光の当たった部分に効果が出る(曇っている日には効果が無い)
- 遮熱塗料は、夏の温度上昇対策に効果がある(冬場に寒くなってしまうことは無い)
- 遮熱塗料は、室内の温度を最大-2℃程度下げる効果が期待できる
- 遮熱塗料は、薄い色の方が効果を発揮できる
- 遮熱塗料は、屋根に塗ると効果が高い
- 遮熱塗料は、金属素材に塗ると効果が絶大
ラジカル塗料(ラジカル制御技術)
ラジカルというのは耳慣れない言葉だと思いますが、外壁塗装用の塗料の中では最新トレンドの技術です。
簡単に説明すると【塗料のチョーキングを抑える技術】つまり、この機能・性能により塗料の寿命が長くなるという事です。
これは、日本ペイントが「パーフェクトトップ」シリーズで開発した技術です。
このパーフェクトトップの樹脂はアクリル樹脂で、シリコン成分は入っていません。
当初日本ペイントではパーフェクトトップの謳い文句として「新時代のアクリル樹脂塗料でシリコンを超える!」と謳っていましたが、次第に「アクリル」の文字が消えていき、ラジカルだけが残るようになっています。
そこで追随する他メーカーは、新型のシリコン塗料に「ラジカルを抑える・・・」という文言を入れ、さらに15年の耐候年数を謳い、パーフェクトトップの独走を食い止めようとしているようです。
この最新カテゴリーの塗料は、各メーカーで1種類づつのグレードしかありません。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。
外壁塗装の塗料の種類について、なるべく簡単にまとめてみました。
少し文章量が多過ぎたかもしれませんので、最後に表をもう一度載せておきます。
この塗料の中から、ご自分の家にはどのような塗料を選んだら良いかを考えて行くのですが、それにはまた別の方法があります。
実際には皆さんがこれらの塗料についての性能等を知る必要はあまりありません。
ただ、外壁塗装の塗料にはこの程度の種類があって、この程度の分類や種類の系統があると知っていれば大丈夫です。
訪問業者や若い無知な営業マンに当たってしまった時には、今一度確認のために読み直して活用して下さい。
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